比較級 more や less をもつ慣用句の覚え方

前回のクジラ構文に続き、more や less を使う句の安直な覚え方について書いておきましょう。

そんな慣用句はそれぞれの語から意味をとることができるので不要だろう、と言って軽視する人もいますが、しばらく出会っていないとき、テストのときなど、意味の確認には役に立ちます。

まず no more than と no less than です。

I have no more than one thousand yen.
私は千円しか持っていない。
I have no less than one thousand yen.
私は千円も持っている。

では no more than = only と覚えておいて、少ないことを強調する句と考えます。すなわち「以上ではない」ととれます。less の方はその反対の意味ですから、「以下ではない」ということになり、同様に、これは多いことを強調する句になります。(= as many/much as と説明されますが、only の反対の意味として日本語の「も」で捉えていいでしょう。)

これと似た句に

I have not more than one thousand yen.
せいぜい千円ぐらいは持っている。
I have not less than one thousand yen.
すくなくとも千円は持っている。

があります。それぞれやはり「以上ではない」「以下ではない」と言っていますが、これらの文はただ単にその金額以上/以下をもっていない/もっていることを述べています。語法上は no が more を否定している「語否定」、not は「文否定」と説明されます(『基礎と完成 新英文法』p. 303)が、いくらかの強調はあると考えるべきでしょう。(not は more/less の前に移動しているわけですから。)そこで意味の捉え方としては not more than は「上限」を表し、not less than は「下限」を表すとして上記のような日本語をあてることになります。ところが「せいぜい」と「少なくとも」は no の組み合わせほど、簡潔とは言えません。

そこで、これらの表現と同じ意味の英語の句、at (the) most と at least に結び付けて覚えます。ここでの目印は t と m、t と l です。(no more than と no less than には t はありません。

noT More than = aT (the) Most
noT Less than = aT Least 

と覚えます。おそらく、入門レベルの学習者でも at least「少なくとも」は知っているに違いありません。したがって、only と at least からこの4つの意味をおさえるという方法となります。マッピングの構造は

(only ↔ も) ↔ (no more than ↔ no less than)
(at most ↔ at least) ↔ (not more than ↔ not less than)

というわけです。手の込んだことを、と笑っているあなた、慌てているとき、焦っているときにはきっと役に立ちますから、まあ頭のどこかにしまっておいてください。"-_-"


参考文献:
安藤貞雄『基礎と完成 新英文法』(新装版)開拓社、2021年

 

 

クジラ構文の暗記法

英語を教えていると不思議に同じ表現がほぼ同時に見つかります。日課として英語を読んでいる人もそのような経験があるのではないかと思いますが。

英文法関連のクラスで形容詞・副詞の比較の話になり、例の有名な「クジラ構文」の説明となりました(『基礎と完成 新英文法』p. 304)。

no more A than B = not A any more than B 
「A でないのはB でないのと同じ」

A whale is no more a fish than a horse is.  
クジラが魚でないのは、馬が魚でないのと同様だ。

と、いつも例文にクジラが出てくるので「クジラの構文」として知られています。この文では主節にも従属節にも実は否定はなく、クジラの魚の程度と馬の魚の程度を比較した文で、前提として「馬は魚ではない」が含まれています。その点で文脈から「否定」を読む必要があり、慣用的です。

そこで和訳の方では否定を入れて、「ナイ ナイ 同様」となりますが、強調されているのは主節(クジラ)の方なので、上記の訳文のようにするか、構造に沿って、後から前に

A whale is〈no more〉a fish〈than a horse is (a fish)〉.  
   ナイ〈同様〉        ナイ
馬が魚でないのと同様にクジラは魚でない

(後から)「ナイ 同様 ナイ」

と暗記すると、メリットとして1) than 節は従属節であること、2) no more ~ than に「同様」があること、3) 「ナイ」「ナイ」は文脈上の訳語であること、をおさえることができます。

そのような説明をして部屋に戻って、手元の『英語教師のための語法ガイド』を読み進めてみると、この構文には、ここでの

A is no more B than C is (B).  

に加えて、

A is no more B than C is D.  

もあるとして

A tomato is no more a fruit than an elephant is a fish.  
トマトが果物と言えるのなら象も魚だね。

も挙がっていました。また訳文もここでのように

A が B なら C だって D だ。

の方が適切である、としています(同書、p. 60)。なるほど。

出版100周年と言われる The Great Gatsby をたまたま読んでいますが、なんとここにもクジラがありました(訳は引用者、p. 41)。

I never was any more crazy about him than I was about that man there.
そこにいる男に夢中にならなかったのと同様、私は彼に夢中になったことなどない。
[「そこにいる男」は語り手のニック・キャラウェイ、「彼」とは発言者(マーテル)の夫のこと]

先に引用した文法書に not ... any の方が口語的と注記がありましたが、意外と話ことばでも使われる表現かもしれません。"-_-"


引用・参考文献:
安藤貞雄『基礎と完成 新英文法』(新装版)開拓社、2021年
柏野健次『英語教師のための語法ガイド』大修館書店、2025年
F. Scott Fitzgerald, The Great Gatsby, Penguin Books, 1950.  

 

深層構造を利用する

以前疑問文の作り方に関して深層構造を利用すると、Yes/No を求める疑問文は動詞句内の助動詞部分と主語との入れ替えによって説明できる、というようなことを書きました(2024-03-30)が、これが特殊疑問文(wh- 語句をもつ疑問文)を作るという作業になると、さらに確信をもって作れる場合もあります。すっかり慣れてしまっている人に関しては何でもない変形でも、日本語の疑問文と違って、変形の操作が2つ絡んできますから、とまどうこともあります。

まず特殊疑問文を作る場合の規則を2つ覚えましょう。

1  疑問詞(疑問詞をもつ句)は文頭にもって行く。
2  疑問文の語順にする。

平叙文の中の不明な情報を求める部分をそのまま書き込んだ文をまず作業上、作ります。

例えば

John opened my letter.  

の場合、「だれが」を聞きたい場合と、「何を」を聞きたいとき、また「何をしたか」を聞きたい場合があります。それぞれ上記の文中に疑問詞を入れて(動詞句が不明とする場合はその部分に do WHAT をはめ込み)、

WHO opened my letter?
John opened WHAT?  
John did WHAT?  

と変形前の構造をつくります。(これを深層構造とします。ここでいう深層構造は生成文法でいう厳密なものではなく、学校で説明するため簡略化した便宜上の形です。)ここで 1 の規則は 2 よりも強いとしておきましょう。(世の中の規則には優先されるものがあり、強弱があるのはご存じの通り。)するとそれぞれ次の文が第一段階(1 を適用)として、

WHO opened my letter?
WHAT John opened?  
WHAT John did?   

ができます。これが 2 に従って、

Did WHO open my letter?
WHAT did John open?  
WHAT did John do?   

となりますが、最初の文は 1 に違反しますから、不可とします。そこで、これは一段階戻って、

Who opened my letter?
What did John open?  
What did John do?   

という形で疑問文が完成します。(時制に気をつけてください。)2の規則が適用される前の構造

who opened my letter
what John opened  
what John did   

は、疑問の節として文に埋め込まれる場合はそのまま使えます。

I don’t know who opened my letter.

Wh- 語句として移動しますから、例えば

You have three brothers and two sisters.  

のような文では、目的語の部分を、疑問詞をもつ句として 深層構造を

You have [HOW MANY brothers and sisters]?

としてここから

[HOW MANY brothers and sisters] you have?
How many brothers and sisters do you have?

を作ります。

それではもう少し複雑な文の練習をしてみましょう。能動文から受動文に変形します。もちろん意味をとって構文するのが一般的ですが、少し構造的な分析と反省をしてみましょう。わからなくなった時に確認するのにも有用です。(文例は『基礎と完成 新英文法』から。)

1.    What did John see?  
2.    Who discovered America?  
3.    What do you call this flower?

それぞれ深層構造を再現します。

1.    John saw WHAT?  (SVO)
2.    WHO discovered America?  (SVO)
3.    You call this flower WHAT?  (SVOC)

受動態にします。

1.    WHAT was seen by John? 
2.    America was discovered by WHOM? 
3.    This flower is called WHAT (by you)? 

1 と 2 の規則を適用します。

1.    What was seen by John? 
2.    Who was America discovered by? 
3.    What is this flower called? 

変形後に副詞句となった部分(by ~)では前置詞を後に置いていく、という形が現在ではふつうです。(What are you talking about? など。)また、疑問詞 who は前置詞の後では目的格を守って whom としますが、単独では who です。一般の人々を指す you は受動文では出しません。

慣れれば数秒で変形できます。"-_-"   


参考文献:
安藤貞雄『基礎と完成 新英文法』(新装版)開拓社、2021年

 

 

進行形の用法(3)

前回は瞬間動詞や完結動詞が進行形になると「反復」「推移」などの意味になる、という点を補足しました(表記上不明瞭なところは修正しました)。

今回は状態動詞と言われている動詞が進行形になる用法について見てみましょう。一番状態を表わすと感じられる構造は

be 動詞 + 形容詞/名詞

の形で例えば

She is kind. 彼女は親切だ。

と言うとき、この文は she である人の特性・性格を述べています。この状態が明日になると変化するとはふつうは考えられません。ところが、

She is being kind. 彼女は親切にふるまっている。

という言い方があり、これは一時的にその時点で親切な行為をしているという意味を表現します(例文・訳は『基礎と完成 新英文法』p. 106より)。他にも行為に結び付けられる形容詞や名詞にはこの用法があり、例えば辞書には

You're being so quiet tonight. 
今夜はいやに無口だね。
Mark was being a fool yesterday. He isn't usually such a fool.
マークは昨日、ばかな真似をしていた。いつもはそうじゃないのに。
  ―『ジーニアス英和辞典』

という例が挙がっています。(また、上記辞書の語法欄には使用される主な形容詞、名詞が列挙されています。)これらの用法は「目前」の進行形ということになります。
進行形にできない状態動詞として次のような動詞が考えられます(上掲書、pp. 104-105)。

精神活動 think  hope  forget など
感覚 see  smell  hear  feel など
関係 contain  depend  have など

ところが、これらの動詞も一時的な行為・状態を表現する場合は(特に人間が主語の場合)、次のように進行形が可能です(注記のない例文は上掲書から)。ここには動作動詞への転移が感じられますが、一部辞書にもそのような記載をしているものがありますから、用法の一つひとつについては辞書に頼る方がいいと思います。(後に用法を〈 〉で示してないものは「目下・目前」の進行形。)

I am thinking of visiting John.  
ジョンを訪ねてみようかなと思っている。
My daughter was hoping to see you here.  
私の娘がここであなたにお会いすることができればと思っていました。
〈丁寧〉(「一時的な思いである、今はそうでもない」と思わせることで相手の負担を軽くすることから)
  ―『英文法総覧』p. 395
I’m already forgetting it.  
もう忘れかけている。
〈推移〉
I am seeing a lot of John these days.  
近ごろは、ジョンと度々あっている。
〈期間限定〉
She's smelling the milk to see if it is sour.
彼女は牛乳がすえていないかにおいをかいでいる。
  ―『ジーニアス英和辞典』
I’m hearing it better now.  
今はさっきよりはよく聞こえてるよ。[マイクのテストなど]
The doctor is feeling her pulse.  
医者が彼女の脈をみている。
My wife is having a baby in June.  
妻は、6月に子供が生まれます。 
〈予定〉
The envelope was containing a pair of concert tickets when I mailed it.
投函した時, 確かに封筒の中にはコンサートの券が2枚入っていた。
(「一時的状態を表す時には進行形可」と注記あり)
  ―『ジーニアス英和辞典』
I'm depending on you.
君が頼りだ, 頼んだよ。
  ―『ジーニアス英和辞典』

上記のうち「丁寧」だけは(1)で見た「習慣」のように心理的な時間の移動があります。長い時間にわたる状態を一時的行為・動作に縮小するという特性は読みとることができると思います。"-_-"

参考・引用文献:
安藤貞雄『現代英文法講義』開拓社、2005年 
同上『基礎と完成 新英文法』(新装版)開拓社、2021年
南出康世・中邑光男編『ジーニアス英和辞典 第6版』大修館書店、2023年
安井稔安井泉『英文法総覧』(大改訂新版)開拓社、2022年

 

進行形の用法(2)

動詞には、動作・活動のような完了/完結を予想させる意味を表す動詞(動作動詞)と、継続を意識させる動詞(状態動詞)があると考えられます。動作動詞には一瞬のうちにその行為が完結する瞬間動詞や、その完結にいくらか時間を必要とするもの(達成動詞や到達動詞といわれる動詞)も含まれます。(行為が終了することを「完了」と言わずに「完結」というのは英語の完了形からくる意味との混乱を避けるためです。)

例えば、状態的な意味をもつ(『現代英文法講義』p. 72より)

believe  know  hate  love  belong  have  

などの動詞は意味されている状況は継続的です。それに対して

build  eat  keep  make  read  

などの活動(activity)を表す動詞や

close  die  drown  fall  forget  go  stop  

などの動詞では、その行為に要する時間の長短はあるものの終わり(完結)が意識されています。

一般的に状態動詞は進行形を使用しなくても状態的意味は出せるわけですが、動作動詞の方はその過程・移行を表すためには進行形を利用します。進行形は、動作動詞の表わす行為の完結までの状態を表わす文法的な仕掛けです。The door is closing. ではまだドアは閉まっていないことになります。したがって、進行形は動作を(その行為の継続や、その行為に至るまでの)状態に変える手続きと言えるでしょう。

前回状態を表わす動詞も進行形にできるという例(「住んでいる」)を見ましたが。どうやら状態を表わす動詞を進行形にする場合は、時間的広がりを「縮める」ことを示していると考えることができます。一方動作動詞を進行形にするとその過程や完結間際の時間を「引き伸ばす」と見ることができます(『意味と英語動詞』p. 27)。興味深いことに

動作動詞 + 進行形 → 対象行為時間の(心理的)拡大
状態動詞 + 進行形 → 対象行為時間の(心理的)縮小

という時間構造になり、一見、反転的現象が見られます。これは完了形において観察される相互補完的構造に似ています。

動作動詞 + 完了形 → 完了
状態動詞 + 完了形 → 未完了(継続)

いわゆる迂言形(be + 現在分詞、have + 過去分詞)などの「スイッチ」はプラスとマイナスのどちらかにしか作用していないことを暗示しています。

さて、それでは進行形の用法に関して動作動詞の用法についてどのような時間構成になるか、活動動詞以外のいくつか典型的な例を見てみましょう。

まず、瞬時的(momentary)動詞と言われる

sneeze  cough  blink  explode  hit  jump  

ですが、この動詞を進行形にすると、特に身体に関わる動詞(身体動詞)では(例は『現代英文法講義』、p. 72)、

He was jumping for joy.  
彼は喜んで(何度も)はね回っていた。

でのように反復の意味でしかとれません。(前回見たように習慣としての行為も反復ですが、そこには動詞自体にそれを表す要素はありません。)したがってこのような用法では、それぞれの行為は完結していてその行為の反復による継続(状態)と解釈されます。

また、瞬時的な意味のないものの、完結の意味を中にもつ動詞で上に挙げた

close  die  drown  fall  forget  go  stop 

などでは(例文は同上、p. 72)、

The bus is stopping.
バスは止まりかけている。

でのように推移的・過程的意味になり、「...しかけている」という「完結への接近」を表すことになります(同上、p. 75)。

したがって進行形の用法としては、動作動詞と分類されてもその中に完結性をもつものでは前回の

1 目下・目前
2 期間限定
3 習慣(非難)
4 予定・計画

という用法に次の2用法を追加することができます。

瞬間動詞 + 進行形 → 反復

ただし、これは1の用法の下位としてもいいでしょう。また

瞬間動詞以外の完結動詞 + 進行形 → 推移・経過

これは、4の用法に近いとしていいでしょう。

他に興味深い用法として

強調の進行形
I am only telling you the truth.
君に本当のことを言っているだけだ。[be 動詞に強勢]
  ―『ロイヤル英文法』p. 425

決意の進行形
I’m not leaving.
立ち去るつもりはない。
  ―同上、p. 426

という例も文脈により読みとることができます。基本は関心のある時間幅の中に特別な意味を込めることですから、談話論的用法と言えます(『現代英文法講義』pp. 120-121)。他に「禁止」「指示」などと読めるものもありますが、時間構造も見失わないように注意したいところです。"-_-"

引用・参考文献:
安藤貞雄『現代英文法講義』開拓社、2005年 
リ-チ、G. N.(國廣哲彌 訳注)『意味と英語動詞』大修館書店、1976年
綿貫陽ほか『ロイヤル英文法』(改訂新版)旺文社、2000年

 

進行形の用法(1)

英語の「進行形」については、ほとんど質問は出ません。おそらく日本語の「~している」を当てはめて前後関係で意味がとれるからでしょう。しかし、書く、話すというときになるとしっかり理解しておくことが必要で、簡単ではありません。

基本的な用法は4つあり((例文は『基礎と完成 新英文法』pp. 103-104)

1 基準時(現在、過去、未来)における行為の進行
  She is making a cake now.

2 限られた期間に反復される行為
  I’m going to work by bus now. 

3 絶えず継続している行為
  He is always smoking.

4 計画・予定に基づく、基準時から見て未来の行為
  I am leaving tomorrow.  

という捉え方が一般的ではないでしょうか。このうち上の3用法については次のように「~している」と訳出できます(2、3の訳は引用者)。

1 彼女は今ケーキを作っています。
2 今はバスで会社に行っています。
3 彼はいつでもたばこを吸っています。

ところが、4の例は、テイルでは

 私は明日発っています。

となり不可解で、用法を考慮して

 私は明日発つ予定です。

のように「未来」を持ち込んだ訳出が必要です。

さらに、状態動詞の live などでは日本語のテイルはその中に含まれていて

 He lives in Osaka.
 彼は大阪に住んでいます。

と英語の方は「大阪が定住地である」という意味では進行形になりません(上掲書、p. 103)。また英語には日常の行為を表す現在形の用法もあり、この場合は日本語の方はふつうテイルで表現します。例えば

 私は(毎朝)8時に起き(てい)ます。

ですが、これを英語にするときは、

 I get up at eight (every morning).

です。上記の2文が進行形で言われる場合、

 He is living in Osaka.
 彼は大阪に住んでいます。

 I am getting up at eight (this week).
 私は(今週は)8時に起きています。

となりますが、動詞句の部分の日本語は同じです。この進行形の例は実は2の用法で、ここでの行為が「限られた時期」のものであることを表しています。

例文3に関してはよく考えてみると「絶えずタバコを吸っている」はずはありません。これは誇張して(大げさに)言っている感情的な用法と考えられます(上掲書、p. 103)。そこで、1を基準に他の用法を見ると、2は時間幅を拡張している用法、3は一部の行為が繰り返されるために誇張している(非難の気持ちを含む)用法、4は基準時の行為を心理的に(気持ちの上で)未来時に移して言う用法、と捉えることができます。時間から用法を見ると(「行為」にものの「動き」などを含めます)

1 目下・目前の行為の進行形
2 一時的な行為の進行形
3 習慣的な行為の進行形
4 未来の行為の進行形

と言えるでしょう。時間が関与しますから、それぞれに使用される(または文脈で補える)副詞類は

1 基準時を表す now、right now、then など
2 一時性を表す now、these/those days、lately など
3 繰返しを表す always、for ever など
4 未来を表す tomorrow、tonight など

日本語ではそれぞれ

「~しているところ」(基準時を強調)
「今」「最近」「当時」などの期間を限定する副詞句と「~している/た」
「絶えず」「いつでも」など誇張する副詞と「~している/た」
「明日」「今夜」「(その)翌日」など未来を表す副詞と「~する予定である/だった」

を使うことができるかどうかで判断できます。ラベルをつけて

1 目下・目前
2 期間限定
3 習慣(非難)
4 予定・計画

の進行形と言って押さえつけるのはいかがでしょうか。"-_-"

(3 の「非難」をカッコに入れたのはその感覚が希薄な場合もあるためです。『現代英文法講義』p. 118参照。)

参考文献:
安藤貞雄『現代英文法講義』開拓社、2005年 
同上『基礎と完成 新英文法』(新装版)開拓社、2021年

 

名詞に前置される節構造

複合語について、句レベルの構造を見てきましたが、その名称のうち、「句動詞」という言い方からそれに類似のラベルを検討しました。すなわち、

句名詞: 2語以上から成る複合名詞
句形容詞: ハイフンで2語以上をつなぎ、名詞に前置する句
句副詞: 前置詞のない、2語以上から成る副詞用法の名詞句(実質的には名詞句副詞)

という考え方です。最初に話題にした、群前置詞、群接続詞という名称も加えると、実はこの「群」(グループ group)という枠の方が句(phrase)より上位の捉え方になります。上記の語群はすべて「群―詞」の下位の命名です。(したがって、群名詞、群形容詞などもOKです。)すると、群形容詞には、句形容詞と節形容詞があることになります。用語というものは使いかってがいいものが優先されますからあまり細分化すると混乱しますが、もう一つ節レベル/文レベルの修飾を知っておくと便利です。

名詞にかかる形容詞修飾は句レベル、節レベルは後置ですが、「文」が名詞の前に置かれる構造を、小説を読んでいる人はよく目にしているに違いありません。次のような例を挙げている参考書もあります(『現代英文法講義』p. 478)。

a tall, motherly lady with a ‘can I help you’ look about her
  ―Alcott, Little Women
背の高い、「どうなさいました」という様子を漂わせた母親タイプの婦人

Lester gave her his best paternal, you-can-lean-on-me smile.
  ―Sheldon, If tomorrow comes 
レスターは彼女に、とっておきの、父親らしい、「頼りにしてもらっていいよ」という微笑を送った。

この例にある名詞の前の節構造は、一語の修飾のように「前から後に」かかっています。一語扱いなのです。そこで、形容詞一語のように一つ(以上)の節を前置する語群という意味で、「節形容詞」は便利です。

この枠自体は定型化していますが、中の表現は会話文そのままのものや、複数の節からなるものなど自由度は高く、定型化しているとは言えません。最近出会ったものを見てみましょう。

クマのプーさん」シリーズの2冊目の中で、トラのぬいぐるみ(ティガー Tigger)の跳ね回ってばかりの落ち着かないくせ(bounces)をなおすために、森に置いてきぼりにしようということになります。翌朝に見つけ出してやると、ティガー(訳文ではトラー)はこうなっている、とウサギが説明する部分です。

Because he’ll be a Sad Tigger, a Melancholy Tigger, a Sorry Tigger, and Oh-Rabbit-I-am-glad-to-see-you Tigger. …
  ―Milne, The House at Pooh Corner, p. 113

最後の Tigger についているところの訳文でも

・・・ああ、うさぎさん、どんなに会いたかったか、というようなトラーになるからさ。
  ―石井訳『プー横丁にたった家』p. 186

と会話調の文として埋め込まれています。

次の例は、夏目漱石の『坊ちゃん』の英訳の中です。うらなり先生(古賀)の送別会で山嵐が、そのうらなり先生を転任に追いやった赤シャツを「ハイカラ野郎」とののしりますが、「坊ちゃん」はその程度ではダメだ、と言います。ではどう言えばいいのだ、という山嵐に、

You should have said: foppish, swindling

から始めて、(いっぱい続き)最後に

if-they-barked-you-couldn’t-tell-’em-from-a-dog―rogues 

と長い複文の構造をつけて言います(p. 133)。

(原文では「ハイカラ野郎のペテン師の、・・・、わんわんと鳴けば犬も同然な奴とでもいうがいい」(『坊ちゃん』p. 109)です。)

あまり用語を振り回して学習者を迷わせるのは好ましくないと考える向きもあると思われますが、教える側にはメリットもあります。例えば同類の構造の例を挙げるときにはラベルを付けておくと取り出しやすい、ということがあります。

最初に挙げた群(グループ)接続詞という捉え方は助動詞にも適用できます。群助動詞という語を使用しないとしても be to、have to、be able to、be going to、used to、ought to など同類と考えると説明が明快になる場合もあります。また may に関連して be allowed to につなぐなら、同類の be + 過去分詞 + to の構造を定型化できます。

さらに品詞と言えば感嘆詞も同様に細分化できますが、このぐらいで。"-_-" 


参考・引用文献:
安藤貞雄『現代英文法講義』開拓社、2005年 
A. A. Milne, The House at Pooh Corner, E. P. Dutton, 1928. 
A. A. ミルン、石井桃子訳『プー横丁にたった家岩波少年文庫、1958年
Natsume Sōseki, Botchan, translated by Alan Turney, Kodansha International, 1972.
夏目漱石『坊ちゃん』岩波文庫、1989年