助動詞 do の考え方

最もよく使用される動詞は be 動詞で、次が have 動詞、続いて do です。これらの動詞の使用頻度は他の動詞を圧倒しています。この理由はもちろん、それぞれ助動詞として使われるからです。ところが、do はその使い方が少し違います。

助動詞としての用法で do が他の2動詞と異なるのは、疑問文の形を見ると分かります。今回はこの点を考えてみましょう。

それぞれ助動詞としての例を比べてみると

(1) 進行形と
a. He is learning English.
b. Is he learning English?
(2) 完了形と
a. He has been to Nara.
b. Has he been to Nara?
(3) 一般動詞と
a. He studies English.
b. Does he study English?

(1) と (2) では、主語の前に助動詞が移動してくるのに対し、一般動詞の場合((3) b.)は突然 does が現れます。この辺りを初学者にどのように説明するべきでしょうか。小学校から何度も疑問文を言っていて慣れているということもあり、あまり問題にされないのは教える側としては有難いことです。

学習の順番としては後に出てくる項目ですが、この文((3) a.)の動詞を強調した形

(4) He does study English.

を基底文とするなら、容易に (3. b.) を得ることができます。

実は、英語の教員養成課程にいた人なら知っているように、深層構造を設定する文法論ではこの (4) と似た構造が発話の前に深層にあると仮定しています。(この構造は他の助動詞[法助動詞]とも並行します。can study, will study など。)

すなわち、深層構造の(作業上の)文(かぎカッコに入れます)

[He does study English.]

が普通の文(平叙文)として“浮上”してくると

He studies English.

疑問文の時には

Does he study English? (= (3) b.)

否定文は((1) a. と (2) a. の文でも同様、助動詞に not を直付けにして)

He does not study English.

とすることができます。(過去の文では[He did study English.]となりますが同じです。)

従来 do/does/did 疑問文・否定文と呼ばれていた文は、この構成法に従うと転倒疑問文(「ひっくり返し」疑問文とも、例えば (1. b.)や (2. b.) 、また法助動詞を持つ疑問文)・直付け否定文(例えば、(1. a.) から He is not learning English. など)と同じ様に説明できて便利です。"-_-" 


参考文献:
投野由紀夫『投野由紀夫のコーパス超入門―コーパスでわかる英語学習のコツ―』小学館、2006年
三原健一・高見健一『日英対照 英語学の基礎』くろしお出版、2013年