英語の have は他動詞と助動詞

前回の be 動詞を読んだ人(極少数)は予想できたと思いますが、今回は have 動詞について確認したいと思います。動詞句として、完了形をつくりますが、その作り方として

have  +  過去分詞

という説明になるかと思います。この have が現在の時、現在完了と言います。過去を表す時、過去完了、未来の助動詞が前に付くと、未来完了と呼ばれます。前回と同じで、この段階でこの have は助動詞扱いになっているという点はわざわざ言わない場合もあるのではないかと思いますが、辞書でその用法などを確認するときは助動詞という枠になります。

分詞は基本的には形容詞扱いですが、動詞句としての(末尾の)分詞は本動詞扱いで、その前の(法の)助動詞(can, may など)や have 動詞は助動詞扱いとなります(2023-08-25)。

本動詞としての have の意味は次の2つの構造で決まります。いわゆる第3文型と第5文型で、

1   have  + 目的語
2   have  + 目的語 + 補語

1は節構造としてSVO、2はSVOCとよく略記します。目的語をとりますからこの have は他動詞と分類されます。本動詞としての be が自動詞として

SV
SVC

を構成し、have が

SVO
SVOC

をカバーするという仕掛けです。(動詞 give などがもつ第4文型の枠を入れると、基本5文型がこの3つの動詞で構成されます。)

SVOとしての意味は基本的には「もつ」「もっている」で目的語に応じて、具体的な物から抽象的な経験にいたるまで、訳語は変わります。よく使用される「食べる」「飲む」(2021-10-23)や「(子を)産む、もうける」(2021-11-28)についてはメトニミー的な転移もありそうです。また軽動詞としての用法(日本語の「する」にあたる)も注意が必要です(2021-12-29)。

SVOCとしての意味も基本的には「ある出来事/事態」を「もつ」と考えることができるのは、この用法の1つ「経験受動態」(2023-05-05)と同じです。

SVOC の OC の部分には、「人が~する」「何かが~される」を意味する構造が不定詞、分詞、前置詞句等を用いて作られます。この部分の中の行為等を誰がするかで日本語の表現は変わります。(例文は『ジーニアス英和辞典』より。)

1  主語(S)以外の人/ものが何かをする
 a) 主語の意思
  I'll have the maid set up the guest room.
  メイドにゲストルームを用意させましょう。
 b) 主語以外の意思
  He had his wallet stolen on a crowded train.
  彼は混雑した電車の中で財布を盗まれた。
2  主語が行う
  She always has her report finished by the deadline.
  彼女はいつも締め切りまでにレポートを仕上げてしまう。

ここは辞書の訳語から意味をとろうとすると無理があります。ひとつずつ英文を読みながら、構造に沿って、(学習)辞書を見て適当な日本語で表現するべきです。

大学生や社会人の英語学習者の中には小型の実用性の高い英語辞書を使用している人も多いと思います。この種のポケット版とも言える引きやすい辞書では、このような基礎的な分類に関しては(当然ながら)あまり説明はありませんが、上記の構造それぞれに対して使用される訳語を列記していますから(共に使用される語を do, done などで注記しているものも)、適当な訳語を思いつかないときには有用かと思います。

学習辞典であれば必ず have の項は、他動詞と助動詞という大きな区分があるはずです。後者には完了形の用法が記載されていますから、折に触れて参照しない手はないですね。"-_-"   

参考文献:
赤瀬川史朗監修『パーソナル英和辞典』(第3版)Gakken(学研プラス)、2018年
三省堂編修所編『デイリーコンサイス英和辞典』(第9版)三省堂、2016年
南出康世・中邑光男編『ジーニアス英和辞典』(第6版)大修館書店、2023年