「出産する」の英語

“Afghan refugee gives birth on U.S. plane” という記事(9月8日「朝日新聞」「ニュース 100 words」)に都合よく「出産する」という2つの表現が出ていました(情報源はReuters)。アフガニスタンから逃れた妊婦が、ドイツの米空軍基地に着陸した機内で女児を出産したというニュースです。

「出産する」のスルのところに give が使われるのは、他にも同記事に

give a lecture 講演をする

give a shrug (of one’s shoulders) 肩をすくめる(ジェスチャーをする)

などが注記されています。予想されるように、presentation や speech も give で表すことができます。次の段落に出てくる「出産する」は

The woman delivered a baby girl in the cargo bay of ….

その女性は…の貨物室で女児を出産した。

と deliver が使われています。実はこの語も上記の lecture/presentation/speech 等とともに使用されます。deliver は「配達する」と覚えている人も多いでしょうから、このような無形のものや女児を「配達する」と言うのには抵抗があります。

次のように、動詞の give は

She gave birth to a baby girl.

と言えますから、基本的には「与える」ととることができます。有形・無形のものを与えることができるわけです。この「与える」というところは日本語の「やる」と重なっていますから、ある行為をする、という感覚でそれを「与える」とすることもできると考えられます。

日本語には give にあたることばはなく、「与える」「やる」は目上から目下へ、「上げる」がその逆となっていて、上下が付いてきます。(最近は「上げる」は丁寧語化していますが。)

しかし「やる」が、いくらかぞんざいな含みはあるものの、ある行為をスルという意味で使えることを考えると give の「する」という訳語は全く的外れとは言えません。

では、deliver ですが、この語は辞書に注記があるように「(手元)から(de)自由にする(liver)」です(『ジーニアス英和辞典』)から、元々は「解放する、放つ」(set free)ほどの意味です。すると、やはり「やる」「する」の意味も同様に出てきます。そこで、女児の出産ですが、上の例では自由になるのは「女児」かと思いましたが、歴史を見ると、まず「出産を助ける」があってその後 give birth to の意味になったようです。

The doctor safely delivered (her of) the quintuplets. 

医者は(彼女に)無事に五つ子を分娩させた。(同辞書)

からも明らかです。ということは解放されたのは母親ということになります。

因みに、「彼女は昨日女の子を生んだ」というときには

She had a baby girl yesterday.

とも言うようです。普通には「もつ」でOKということです。お産の最後に赤ちゃんを手にするわけですから。"-_-" 

21 Nov CIMG3787