前回の「する」「やる」(「出産する」の英語)に関して英語を教えているときに気になるのは、何かをする、というときに英語の動詞が do「する」に対応しない場合があるという点です。すぐに思いつくのは例えば、
散歩をする take a walk
ですが、他にスポーツをする類で
サッカーをする play soccer
バドミントンをする play badminton
が中学校の教科書にも出ています。しかし、運動については「ボールやボールに似た形の道具は使わない」次のようなスポーツは do を使います(水島ほかEveryday English Grammar、p. 15)。
judo, kendo, aikido, karate, taekwondo, yoga, aerobics
また「ジョギング(を)する」など、動詞のみでその意味をもつものは
I jog every morning. 私は毎朝ジョギングをする。
We curled in high school. 私たちは高校時代にカーリングをした。
のように動詞で表現できます。(「する」は不要です。)したがって
How often do you go bowling? どのぐらいボーリングをやりますか。
のように go doing ~「~しに行く」として言うこともできます。(例文、訳ともに同書から。)
日本語にはこのような「名詞 + する」という形の表現が多く見られますが、これはどうやら近代以降に(動作性)抽象名詞に属する語彙が増えたため、それに対応したものと考えられます(安部ほか『語彙史』p. 89)。
そのためか漢語と組み合わせた表現が多く、「勉強する」「訪問する」などは一語の study、visit としても違和感はありません。もちろん英語にも同類の表現はあり、上に挙げた take 以外に、give、have、make など、その句の意味の中心的な部分を担わない動詞(軽動詞 light verb という扱いです)を使用して、例えば、make a phone call「電話をする」などという場合があります。(「訪問する」と誤解しそうなときは phone を補います。)
手元の中学校1年生の教科書(New Horizon English Course 1)にこの種の表現がどれぐらい出ているか見てみましょう。
まず1語で表せるものとして「練習する」です(後の数字はページ数)。
We practice in the music room. 30
You practice soccer very hard. 33
ピアノの練習も同様に、practice the piano と動詞一語です(p. 115)。「ジョギングする」も
I jog with my dog around the pond. 48
「ダイビングをする」は dive という動詞で表し「スキューバダイビングをする」も
enjoy scuba diving 59
という形で出ています。他にも、対応する日本語で一語で表すことができない表現の例として
cook (dinner) 86
(夕食の)料理をする
clean my room 115
部屋の掃除をする
travel to London 102-3
ロンドンに旅行する
ski for the first time 108
初めてスキーをする
したがって、この構造に関して、英語の学習者は
do my homework 115
宿題をする
のように do を使用するものはそのまま覚えてもいいですが、そうではない例には注意が必要ということになります。
get surgery 手術をする(受ける) 125
have a game 試合をする 111
have a headache 頭痛がする 74
make a speech スピーチ/演説をする 88
play a video game テレビゲームをする 79
play tug-of-war 綱引きをする 120
take a break 休憩する 99
take a rest 一休みする 74
tell funny stories おもしろい話をする 67
他にも、形容詞との組み合わせで、
be nervous 緊張する 120
get married 結婚する 123
というのもありました。"-_-"
引用・参考文献:
安部清哉ほか『語彙史』(シリーズ日本語史2)岩波書店、2009年
笠島準一ほか、New Horizon English Course 1、東京書籍、2021年
水島孝司/ロジャー・パティモア、Everyday English Grammar Revised Edition、南雲堂、
2011年