英語の be は自動詞と助動詞

英語の be 動詞は動詞句として、進行形、受動形をつくりますが、その形については

be  +  現在分詞
be  +  過去分詞

という説明になるかと思います。この段階でこの be は助動詞扱いになっているという点はわざわざ言わない場合もあるのではないでしょうか。生徒が、動詞が後ろにあるのに、また動詞が要るんですか、と聞くのも無理はありません。この be は他の動詞と同じように活用し(am, are, is, was, were)、助動詞が付く(will be)のですから。

分詞は基本的には形容詞扱いですが、動詞句内の末尾の分詞は本動詞扱いで、その前の(法の)助動詞(can, may など)や be 、have 、及びその活用形は助動詞扱いとなります(2023-08-25)。

したがって、動詞句の一番後ろに be があるときだけが、本動詞としての be で、意味は次に見るように基本的には2つです。

そこで、簡単に見分ける方法はやはり、辞書に頼ることになります。学習辞典であれば必ず be の項は、自動詞と助動詞という大きな区分があるはずです。後者には上記の構造の説明と用法の説明がありますから、ここでしっかり生徒に確認してもらうべきです。(現在、辞書の使用は中学校でも指導することになっています。)

大学生や社会人の英語学習者の中には小型の実用性の高い英語辞書を使用している人も多いと思います。(収録語彙数は8万前後で学習辞典より日常語彙・熟語は豊富に収録されています。)この種のポケット版とも言える引きやすい辞書では、このような基礎的な分類に関しては(当然ながら)あまり説明はありません。

試しに手元にある、2種類の小型辞書(スマートフォンサイズ)を見てみると

be  自動詞 助動詞 …である;(ある場所・位置・状態に)ある、いる;存在する;そのままにある;起こる;挙行される;…している;…される
  ―『パーソナル英和辞典』

be  vi, aux v  …である ▪ ある、いる、存在する(exist)▪ 催される
  ―『デイリーコンサイス英和辞典』

一見、手抜きのように思われるかもしれませんが、実は両辞書とも意味は十分伝えています。学習辞典を見ればわかるように、自動詞の意味は

1  ある、いる
2  である(です)

の2つで、1は存在を表す、文型としては SVの用法、2は日本語の「A は B です」を表す、文型としては SVC の用法です。どちらの辞書も「存在する」を出しているのは、本来の意味を残して、その場でより分かりやすい語に頼る言い換えです。

God is.  神は(本当に)存在する
  ―『ジーニアス英和辞典』

など、ふつうは場所を表す補足的な語句が必要なところ、それがない形の時「ある、いる」では意味が弱いために、情報量の多い漢語表現を使って自然な文となるように訳語を変えているというわけです。

『パーソナル英和辞典』にある「…している;…される」は助動詞の用法の進行形と受動形に対応した訳語(後者は受動態をつくることを思い出させる仕掛けとして)ですが、『デイリーコンサイス英和辞典』では「…である」で兼ねています。進行の意味、受動の意味は後ろの分詞から出てくる意味ですからそこから理解されます。しかし、文法上はこの場合助動詞扱いですから、それに配慮して aux v(助動詞)という標識は付けてある、ということになります。

「起こる」「催される」なども上記と同じ言い換えですが、「ある」では十分伝わらないこれからの出来事(の未来性)を補足している表現と言えます。(他にも時間の継続を意識した場合など、訳語を変える方が分かりやすいのです。)しかし、その意味でも「ある」という日本語で言えることは例えば、『岩波新英和辞典』からの5番目の意味としている

5  (ある時・所で)起る、行われる

にある例文

Where is the show?  ショーはどこであるか。

でも窺うことができます(他辞書にも例あり)。「行く」「来る」の訳語を挙げている辞書もありますがこれも基本的には「いる」から来ていると考えることができます(2023-03-30)。一度愛用の辞書で be の項を全部読んでみるのも楽しいでしょう。

助動詞としての用法も学習辞典ではしっかり説明していますから、折に触れて参照しない手はないですね。"-_-"   


引用文献:
赤瀬川史朗監修『パーソナル英和辞典』(第3版)Gakken(学研プラス)、2018年
三省堂編修所編『デイリーコンサイス英和辞典』(第9版)三省堂、2016年
中島文雄・忍足欣四郎編『岩波新英和辞典』岩波書店、1981年
南出康世・中邑光男編『ジーニアス英和辞典』(第6版)大修館書店、2023年