前置詞 of についての断章(1)

1億語の英語テキストが入っているBNC(British National Corpus)というコーパスで使用頻度の高い語のTop 10を見ると、トップがthe、2位がbeでそのあとにofが来て、and、to、a、in、have、it、heと続きます。(ただし話し言葉のみの順位では前置詞の使用は激減するようです。話をする場面では、前置詞を使用する説明的な語句が不要になる、代名詞の使用が多くなる、などの理由が考えられます。)(『投野由紀夫のコーパス超入門―コーパスでわかる英語学習のコツ―』小学館、2006年)

したがって、前置詞ofの理解は重要です。今回は辞書の記述を中心にこの用法を展望しておきましょう。(例としてあげる文、句はシャープ電子辞書版『ジーニアス英和辞典』大修館書店、2001年から。)

前置詞に関して重要な点は、日本語の助詞と同じで語と語を連結することです。そこで前置詞ofの場合の型を書き出すと、

① 名詞 of 名詞  the leg of the table 「そのテーブルの脚」

② 動詞 of 名詞  die of cancer 「癌(がん)で死ぬ」 

③ 形容詞 of 名詞  (be) slow of speech 「話がおそい」

④ 副詞 of 名詞  east of the town 「その町の東に」

となり、〈 of 名詞 〉が左につく(修飾する)形になります。(最初の句が形容詞句、あとの3形が副詞句となります。)さらに名詞につく場合以外ですが(ということは副詞句として)文頭に出る句もあります。

また、辞書にはあまり記載がありませんが、このof ~の句が補語として(SVCやSVOCのCに)使用される場合があります。よく見かける例では

We are (of) the same age.「我々は同じ年だ。」 

があります。(of がカッコ内に入れて示してあるように話し言葉では省略されます。)

ここで、②について注意したいのは、動詞が目的語を持って

②’ 動詞 + 名詞 of 名詞

という構造になる連語です。この構造は動詞の方から判断すべきですが数は少なく、このofの項目5番目[分離・剥奪(はくだつ)・除去](「・・・から、・・・を」の意味)に入っている

He robbed me of my money. 「彼は私の金を奪った。」

また、項目12の[関連] a.「・・・について(の)」「・・・に関して(の)」の意味で使用される

I reminded him of our dinner this evening.

「今晩の夕食のことを忘れないようにと彼に念を押した。」

I’m sorry to inform you of his death.

「残念なことですが彼の死をお伝え致します。」

のような文となります。

5の例文として挙がっている、rob someone of somethingはdeprive someone of somethingと同じ構造ですが、移動する人・ものに関しては、後者では「人を何かから引き離す」「人から何かを奪う」で、例えば

It is cruel to deprive teenagers of pop music.

ティーンエージャーからポップミュージックを奪うのは残酷です。

のような文(『英辞郎 第九版』アルク、2016年)では双方が意識されます。ところが前者robの句では「人を襲って何かを奪い取る」に近いためof~の句は奪う対象をかなり強く示すことになり、訳語としては「・・・を」を当てはめることになります。このようなofの目的語の対象化は先の12番目の訳語にも感じることができます。

[関連] a.「・・・について(の)」「・・・に関して(の)」 

ただし、先に挙げた例文では、このうち副詞句用の訳語「・・・について」「・・・に関して」をとります。上記の文は(すでに「・・・を」で訳出されていますが)それぞれ、

「私は、今晩の(私たちの)夕食について彼に思い出させた。」

「彼の死についてあなたにお伝えするとは/ことで、残念に思います。」

と解釈されます。(形容詞句の場合は「・・・についての」「・・・に関しての」と名詞につけます。)

さて、of ~の句が形容詞で名詞につく(また補語として使用される)場合の意味、また、副詞として使用されている場合の意味はどうなるか、ある程度英語は読める、ofの用法ぐらい、と自信のある皆さんは、愛用の辞書で順に見てください。(と言うと、全部ですか? あんなにいっぱいあるのに! と思う人もあるでしょうが、このような基本語について辞書に書いてあることを知らないようでは英語は使えません。読むだけなら何とかなるかもしれませんが...。)

すでに見たように、形容詞句としての訳語は「~(について)の」、副詞句としての訳語は「~から、~について(~を)」が出ましたが(そしてこれだけの知識でほとんどの文意はとれますが)、『ジーニアス英和辞典』では、大きな意味として、6種類を挙げています。すなわち、所属、分離、根源、部分、関連、文法的意味です。これらの分類上の用語の意味を知っているだけで of 句の理解は深まります。次回からこの詳細を見ることにしましょう。

(この項続く)

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