8 不定詞の結果用法をもつ疑問文

Q: ラジオ講座のテキストにあった文ですが

  What did she do to you to get you so angry with her?

  先生がどんなことをしたからそんなに腹を立てているんだい?

では、to get以下は前にある原因を説明する不定詞ということです。結果の副詞用法と考えていいですか。

(I.Y.さん 各務原市

A: それでいいと思います。ここでは文の意味として

  先生が何かしました。(原因) → あなたは腹を立てています。(結果)

ですから、前に原因があって(「~したから」と訳出されています)、それを補足する「説明」の部分という意味と解されます。(文法的には修飾している部分となります。)

一般に不定詞の時間はそれが関わる動詞のもつ時間より後に行われる行為を表します。

  S V ~ to DO ST.

という構造の場合、述語動詞の行為が行われる時間より、不定詞のもつ時間は後になります。(すなわち述語動詞からは未来の行為ということになり、不定詞は未来性があるとも言えるわけです。)ただし、感情を表す言葉(glad、happy、pleasedなど)を前にもつ、「原因」の副詞用法は他の用法とは不定詞の表す時間構造が異なります。(2017-10-01の3.1で少し触れています。)

さて、この文の文脈ですが、「先生」は評判の先生(she)ですが、ここでの対話者(you)にたくさん宿題を出しました。レポート提出が遅れたためです。当然と言えば当然なのですが、ひどく怒っているのでその理由を聞く文というわけです。(NHKテキスト『ラジオ英会話』2019年7月号。)

この文では不定詞句の動詞の表す時間と、前の部分の述語動詞の表す時間にはっきりした時間差があり、不定詞の方が後に起こっています。すなわち

  She did something to you to get you angry with her.

では、不定詞句が副詞用法(動詞を修飾)であれ、形容詞用法(名詞を修飾)であれ、その時間構造は、She did something. が先で、She/It got you angry. が後です。

ここでまず副詞用法として考えてみましょう。「目的」であれば

  あなたを怒らせるために、彼女は何かをした。

となり、悪意が感じられます。(評判の先生ですからそんなはずはありません。)ここでは「結果」と読んで

  彼女は何かをした。その結果あなたを怒らせた。

としていいでしょう。一般に「結果」の用法は参考書等では、「…となる」と訳出し、「目的」とは異なり、無意志と解される表現が用いられる、と説明されています。(例えば、『現代英文法講義』安藤貞雄、開拓社、2005年、p. 212。)

  彼女は何かをしたが、それであなたを怒らせることとなった。

ここで重要なのは、“副詞用法における意味上の主語は、それをもつ主文の動詞の主語に一致する”という規則がありますから、to get you angry with herの意味上の主語はsheとなることです。(She got you angry.)

ところが、ここではsomethingの部分がwhatとして取り出されて(ということは焦点化されて)いますから

  She did WHAT to you to get you so angry with her.

  あなたをそんなに怒らせることになるような、何(どんなこと)を彼女はしましたか。

と疑問詞whatにこの不定詞がついているともとれます。(形容詞句内の時間構造も同じでここでは「結果」を招くものは、不定詞がつく名詞です。)

  something to get you so angry with her

となると意味上の主語はsomething(被修飾語)となります。(It got you angry.)日本語の訳の調子からはこのようにとれないことはありませんが、ここは「たくさんの宿題を出したこと」がdo somethingにあたりますから、「何か」に凝縮するのは避けて、それに文の切れ目(リズム)も考えると、副詞句として「結果」の用法とするのが妥当に感じます。

  What did she do to you / to get you so angry with her?

  彼女はどんなことをあなたにしましたか。どうしてあなたはそんなに怒っているんですか。

と、後半は前にある質問を補足しているようにとれます。皆さん、どう思いますか。

良いお年を。 (^^)/

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